伝統を重んじながら現代の様式を取り入れたお寺の本堂
人が集い、つながる新たな地域の居場所ができました。(40代 副住職)
山昭木材を知ったきっかけ
330年に渡り大切に守り続けられてきた旧本堂の老朽化が深刻となり、建て替えを検討し始めたのが約10年前でした。資金の目処がつくまで、どんな新本堂にするか検討する中で、山昭さんが手がけたお寺の庫裏を見学する機会がありました。
建築中の立派な梁を見せていただき、国産の無垢材をふんだんに使った伝統的木造建築に感動しました。ただ、そのときはきっと建築費用が高額だろうと思いました。
その後、資金の目処がつき、計画が具体的になった段階で、ダメ元で見積を依頼したところ、意外にも予算内で可能だったため、山昭さんにお願いすることに決めました。
こだわったところ
一番の希望は、地震に強い建物であってほしいということでした。
同時に門徒さん※や地域の人に集まってもらえるような場所にしたくて、山昭さんに相談しながら理想の形を探っていきました。
※門徒さん:浄土真宗に所属関係がある人々のこと。他宗派では「檀家」などと表現する。
外陣※は天井まで4.5m、広さ40畳の広々した空間なのですが、柱がなくてこれだけの高さと耐震性を備えた建物は他ではあまり見られないそうです。屋根裏では、8mもの長さになる大きな丸太8本が本堂を支えています。木材屋さんである山昭さんだからできた建物だと実感しています。
瓦屋根ではなく、瓦の約1/6の軽さで耐震性に優れている金属屋根にしたのも、耐震対策のひとつです。
※外陣:門徒さんが参拝する空間。ご本尊を安置する空間は内陣という。
その他の特徴
維持管理やコスト面から外観はお寺風でなくてもいいと割り切り、一方で内陣は伝統的な荘厳にこだわりました。
内陣と外陣の間にある巻障子を無くしてオープンな空間にしたり、外陣の窓から周りの景色やお墓を眺められるように約6mの一枚板を使った長いテーブルを造ったり、慶弔両方に対応できるようにと菖蒲色のカーペット敷きにしたりするなど、利用する方のことを考えてインテリアを決めました。おかげさまで門徒さんにも喜んでいただいています。
御本尊の後方に備えられた御門柱は直径30cm、高さは5mの立派な欅の大木です。山昭さんの大工さんが、丸太をまず八角形にしてから十六角形に整え、そこから丁寧にカンナで円柱に仕上げたそうです。
旧本堂にあった蟇股(かえるまた)の色彩を蘇らせて飾ってくださったり、美しい彫りの装飾を施してくださったりと、随所に大工さんの技が光る本堂になりました。